退職をするなら最低でも一か月前にその意思を伝えるのは礼儀である。

給料の〆日での退職を考えると、そうそう考えてる時間もない。
あれほど望んだ転職だが、いざとなると生じるのが・・・

そう!一番やってはいけないこと。

「迷う」だ。

ものの見事にはまったw

進む道がわかっていても、そこに到達するのが難しいなか、どうやったらそこに行けるか考えるのは

「悩む」と言う。

これは価値があることだ。
だが「迷う」には何の価値も無い。

その迷いの根本は、見えないものへの恐れ、不安だが、究極的に言えば己の弱さだ。

なんだかんだ言っても3年間タクシードライバーをやってきた。
仕事にも慣れ、道も覚え、接客もできるようにはなった。
だが、そこから抜け出したいと思ったのが始まりなのだ。
他の仕事に変わらなくても、内なる決意が本物なら、そのままの環境でもきっと良い結果はでるだろう。
だが、それは何度も決意し、何度も挫折してきたことを考えると、やはり、この場所にいるべきではないと思った。

だが、全く違う世界に入っていくことは、それでも良いのではないかと思うほど、とても勇気がいることだ。

・・・

きっとどちらの仕事を選んでも、あっちの方が良かったのではないか?と思うに違いない。
これがゲームならここでセーブしておいて、先に進んで違うなと思ったら戻るという卑怯な手も使えるだろう。
だが、人生はそうはいかないんだよねw

そんな迷いを晴らしたのは、これまた昔聞いたある漫画家の話だ。

人生にはピンチとチャンスがあり、ピンチを切り抜ける人は強いと思われる。
だが、本当に強いのはチャンスを生かす人だ。

そうだ!俺にはチャンスがおとずれたのだ!
この先、頑張り続けて個人タクシーになったとしても、そこが上限だろう。
だが、異業種には全く想像もつかない未知のチャンスがあるかもしれない。
きっと困難な道ではあるが、だからこそやりがいもある。

やっと迷いは晴れてきたのだが・・・

大事なことがある。
もう、どちらに進むべきかを自分の中ではほぼ決めた状態だが、正式に採用の通知をもらったわけではないのだw

そんな時、紹介してくれた友人からメールがきた。

「いつから来れる?」

って、まだ採用と言われてないんだけどw
やはりそこはキチンと会社から採用と言ってもらわないと踏ん切りがつかない。
その旨を伝えた2時間後、面接をしてくれた副社長から電話があった。

「この先、一生もののスキルを身に付けていきましょう!」

この一言で完璧なまでに俺の角度は決まった。

翌日、俺は班長のところへ行ってこう言った。

「あの~・・・ハイヤーの話も頂いたのですが・・・」

「やっぱりタクシーに残りたい?」

「いえ、会社を退職しようと思います。」

ハイヤーかタクシーかの話をすると思った班長は、一瞬言葉を失ってから聞きなおした。

「ハイヤーに行くのをやめるんじゃなくて?」

「はい、会社を辞めます」

「わかった。明日改めて話をしよう」

それは一応ちゃんと話をしたのか?と言われたときのための儀式のようなものなのだろうと理解した。

班長や会社には、それほど心苦しいとは思わなかった。
だが、こんな俺でも仲間と呼ばせてもらえるドライバーがいる。
そっちの方が辞めるというのが心苦しい。

ある先輩は、ハイヤー断ってタクシー続けても大丈夫だよと、会社との関係から辞めると言ってると思って心配してくれて、相談にのってくれた。
辞めちゃうのは寂しいと言ってくれる人も・・・

俺は 高校中退で親と働き、次の下水屋では一緒に入社した人は皆すぐに辞めてしまった。
生涯で仕事で同期と言える人がいない中、このタクシーだけは同期と呼べる人が二人いる。
ドライバー同士は上下関係もなく、よっぽどの先輩ならともかく、皆仲間と呼べるような人が多かった。
だから同期という概念はあまり無い世界だが、ほぼ同じ時に入社し、同じ教官に教育を受け、デビューもそれほど変わらない二人(正確にはもっといるのだけど)には特に思い入れがある。

稼ぐのが難しい土曜日にデビューして、いきなり7万5千円売り上げてきたN君
福島から上京して、道も一切わからないところからスタートしたI君

この二人に辞めることを話すのが、一番辛かった。

つづく